
令和7年6月6日(金)、京都市内にて「木と暮らすデザインKYOTO 令和7年度第1回 パートナーミーティング」を開催いたしました。
今回のミーティングには、木材やものづくり、教育、流通、地域振興など、さまざまな分野から41の事業者・団体の皆さまにご参加いただきました。
本プロジェクトは、「木と人、木と地域のよりよい関係づくり」をテーマに、京都をはじめとした地域に根ざした木育(もくいく)やプロダクト開発の取り組みを推進していくことを目的としています。その実現に向けて、多様な立場の事業者同士が連携し、それぞれの強みや知見を持ち寄りながら、持続可能な形で地域課題の解決や新たな価値の創出に取り組んでいくことが求められています。
今回のパートナーミーティングは、そうした協働の第一歩として、関係者が一堂に会する全体会議の場となりました。
オリエンテーションで目指す方向性を共有
ミーティングの前半では、事務局よりプロジェクトの趣旨やこれまでの経緯、今後の展開に関する全体説明を行いました。
「木と暮らすデザインKYOTO」が目指すのは、単なる製品開発やイベント開催にとどまらず、木材を通じて人々の暮らしや地域文化に新しい意味を吹き込むことです。森林資源の循環利用や次世代教育との連動、地場産業の振興など、多角的な視点での取り組みが計画されています。
参加者からは、それぞれの分野で本プロジェクトにどう関わっていけるか、具体的な連携の糸口を探る姿勢が感じ取れました。

木育部会・プロダクト部会に分かれての対話
オリエンテーション終了後は、プロジェクトの主軸を担う2つの部会「木育部会」と「プロダクト部会」に分かれての意見交換を実施しました。
各部会の冒頭では参加者の自己紹介が行われ、お互いの活動背景や専門分野、木への想いが語られました。それぞれの発表に対し、共感や驚き、さらなる問いが自然と生まれ、会場には温かく前向きな空気が流れました。
木育部会
本部会では、「木育(もくいく)」を中心テーマに、教育・建築・素材製造など、異なる分野の参加者が集まり、今後の連携と協働の可能性について活発な意見交換が行われました。
木を通じた学びや体験を共有しながら、地域社会全体へと広がる持続的な取り組みが期待されています。

■社会的テーマと結びつく木育の必要性
木育は、木材資源の活用という枠を超えて、「未利用材の有効利用」や「脱炭素教育」、「文化的景観の保全」といった社会的な課題とも深く関わっています。木を単なる素材としてではなく、環境・教育・文化をつなぐ媒体としてとらえ、より多様な分野との接点を持つことの重要性が共有されました。
■今後のアクションと提案
議論の中では、以下のような具体的な取り組みが提案されました。
地域・職域を超えた横断的な連携の強化
地域間(例:京都と他の地域)や、市民と行政、教育と建築など、立場や業種の垣根を越えた協働を進めることが必要です。
木育と生物多様性を融合したアプローチ
木育は、木材という資源への理解を深めるだけでなく、私たちの暮らしと自然環境のつながりを実感できる教育的な取り組みです。今回の会議では、木育の意義をさらに広げ、「生物多様性」との融合的なアプローチが必要であるという意見が出されました。
具体的には、森林が単なる木材供給源ではなく、多様な動植物の生息地であり、地域の気候や水資源を守る重要なエコシステムであることを、木育を通じて子どもたちや市民に伝えていくことが提案されました。森の中での観察やフィールドワーク、間伐材や虫食い材を教材として活用することなど、自然の多様性を体感できる学びの手法も注目されています。
こうした視点を取り入れることで、木育は単に「木を使う」「木を知る」という行為にとどまらず、森に生きる命の循環や持続可能な環境づくりへの理解を深める学びへと進化します。さらに、生物多様性の保全や気候変動への対応といった、地球規模の課題に対する意識を育てる契機にもなります。
今後は、木育を担う教育者や実践者が、環境教育や自然保護の視点を意識的に取り入れ、地域の自然資源を活かしながら、多角的な学びの場を構築していくことが求められます。森に息づく多様な命に触れることで、木や森への理解がより深まり、人と自然の共生に向けた感性が育まれると期待されています。
教育現場との連携と実践事例の共有
学校教育における木育の取り組みは、子どもたちが自然や地域資源と身近にふれあう貴重な機会として、近年ますます注目を集めています。会議では、実際に木育を授業や学校行事に取り入れている事例が紹介され、大きな関心を呼びました。
こうした実践を広く共有し、各地の教育関係者が自校での導入を検討できるような情報発信の強化が必要です。特に、教材としての木材の扱い方、森林との関わり方、地域の職人との協働方法など、実践者ならではのノウハウや工夫は、今後の参考として非常に有益です。
また、実際の現場を訪れて学べる「見学会」や「体験交流」の機会づくりも重要です。教育関係者が他地域の先進事例を現地で体感することで、木育の具体的なイメージがつかみやすくなり、導入のきっかけにもなります。
今後は、こうした実践例の可視化と、現場をつなぐ交流の場を設けることで、木育を軸にした教育現場との連携が、より一層広がっていくことが期待されます。
木育部会での印象的な声(抜粋)
「森のことを伝えたいだけじゃなくて、人と森をつなげたい」
「木の学校がたくさんあるのに、発信できていない」
「子どもたちに“木って何?”と聞かれる。教えること自体が学び」
「地域の催しを通じて、新しいつながりが生まれている」
「木が生き物であることを、もっと多くの人に伝えていきたい」

■活動拠点の見える化と情報の共有
各団体が取り組む地域の活動拠点を地図で「可視化」し、相互理解と連携を促進する仕組みづくりも進められています。会議で共有された活動エリアマップは、事務局で整理のうえ配布予定です。地域間連携の参考資料としてご活用いただけます。
木育は、地域資源を守り活かすだけでなく、人と自然、暮らしと未来をつなぐ大切な役割を担っています。今後も多様な分野と連携しながら、実践を積み重ねていくことで、より豊かな地域づくりが進んでいくことが期待されます。