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木と暮らすデザインKYOTO 令和7年度 第1回 パートナーミーティングの実施  ~後編~

2025年7月29日

プロダクト部会

木製品の素材、デザイン、制作、販売に関わる事業者が中心となり、地域材を活用した製品づくりの可能性や、マーケットの動向、展示会を見据えた試作アイデアなどが共有されました。

本部会では、木材・竹材を活用した地域産業の持続と発展に向けて、さまざまな視点から現場の課題や可能性について議論が交わされました。以下に、主な論点を整理してご紹介します。

■人材不足と地域性の課題

特に京北地域では、若手人材の確保が極めて困難であり、製造から販売・広報までを一人で担わざるを得ない事業者も多く見られました。こうした状況を改善するため、短期雇用マッチングサービスの活用など、都市部の若者を巻き込む新たな仕組みづくりの必要性が指摘されました。

■製品価値の伝え方と価格のギャップに関する課題

作り手の思いや技術が消費者に十分に伝わっておらず、価格への理解も得られにくい現状があります。このギャップを埋めるためには、展示会やギャラリーなどを通じて、作り手と買い手が直接対話できる場を設けることが効果的であるとされました。

■素材の活用と環境への配慮

地域の山で育てた木材は、地域内で使用することで特性をより活かすことができます。虫食いや災害木といった一見ネガティブな素材も、その背景を伝えることで新たな価値が生まれる可能性があるという意見が共有されました。

■製造現場の実情と販売戦略の見直し

多くの事業者が小規模かつ少人数で運営されており、機械の整備や営業・デザイン面に課題を抱えています。こうした中で、都市部や海外などの新たな市場を意識したブランディングや販路拡大の必要性が指摘されました。

■ハイブリッド素材やデザインとの融合に関する事例やアイデア

杉と竹、木と漆、木とセラミックなど、異なる素材を組み合わせることで、独自性のある商品が生まれる可能性があります。特に、小ロットであっても工夫次第で高い付加価値を実現できるという視点が、多くの参加者に共有されました。

■今後の取り組みと提案

今回の会議では、今後の連携や取り組みとして、以下のような具体的なアクションが提案されました。業界全体の活性化に向けて、若手人材の育成や外部との連携強化が重要なテーマとなっています。

まず、地域の資源や現場の魅力を広く伝える手段として、製材所、山林、竹林、木工所などを巡る現地見学ツアーの企画が挙げられました。木材が育ち、加工され、製品になるまでの過程を実際に見て感じてもらうことで、都市部の若者や消費者に木の背景や価値を伝える「体験型の啓発活動」として期待されています。

また、販売促進やブランド構築に向けた取り組みの強化も重要な課題です。特に、教育現場と連携した木製品の活用や、展示用商品の共同開発を通じて、商品そのものの価値を高める試みが提案されました。あわせて、デザイン力やプロモーション手法を活かしたブランドづくりにも注力していく必要があるとの意見が交わされました。

さらに、人材育成と地域内ネットワークづくりに関しても、多くの意見が集まりました。若手職人の育成やインターンシップの受け入れを通じて次世代を担う人材を育てると同時に、工場や製作現場同士をつなぐチームの形成によって、業界全体の底上げを図ることが求められています。

加えて、素材と技術の共同活用についても具体的な提案がなされました。スギ・ヒノキ以外の樹種に関する情報共有や、地域内での安定供給体制の構築を進めるとともに、木材の乾燥や加工といった技術面においても、設備やノウハウの共有・検証を通じて、連携の幅を広げていくことが期待されています。

ある参加者は、「普段の活動では出会えないような方々と直接対話でき、視野が広がった」と感想を述べていました。まさに、今回のミーティングはパートナー間の信頼関係を育み、未来の連携に向けた土台づくりとなる大きな一歩となりました。

今後の展開に向けて

今年度は、各部会での実践的な活動が動き出していきます。木育部会では、連携による年間プログラムの開発・試行や活動マップの制作を予定しており、プロダクト部会では、木製品の共同開発や試作品の展示・披露などを進めていく計画です。

また、主要イベントが以下の通り予定されており、プロジェクト全体の成果を広く発信していきます。

2025年9月:「EKIspot KYOTO」(京都駅南北自由通路北側2F)への出展(主催:京都府)
2025年10月:「KYOTO WOOD EXHIBITION 2025」への参加(京都市主催)
2026年2月頃:成果発表会の開催

※この他にも、年間を通して「パートナー訪問ツアー」や「勉強会」などを実施し、学び合いや交流の機会を重ねていく予定です。

これらの機会を通じて、木と暮らすことの価値や楽しさを多くの方に届けるとともに、さらなる仲間づくりや事業発展にもつなげていきたいと考えています。

■今後の展望

さらに本年度は、「木と暮らすデザインKYOTOコンソーシアム」がコーディネーターとなり、地域資源を活かしたより主体的・継続的な活動のもと、パートナーの皆さまと力を合わせて、木とともにある暮らしの豊かさや地域の魅力を広く発信し、次世代への価値ある取り組みとして根付かせていきたいと考えています。

今後とも、「木と暮らすデザインKYOTO」の活動にご注目いただくとともに、温かいご支援・ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

<コーディネーター・スタッフ>

統括 
株式会社千本銘木商会 専務取締役 中川典子(写真中央)

日本建築や和室、京の木の道具を通して、木の文化と暮らしの豊かさを伝え、森と街をつなぐことを目指している。銘木の販売・加工・施工に加え、京町家の再生やモダンな木空間の創造、オーダーメイド家具・建築施工に従事。活動は多岐にわたり、伝統意匠技術の伝承や現代建築への応用、無垢材のデザイン提案など、木のある暮らしを多角的に追求しt。文化財の修復への貢献や、京町家のリノベーションによる地域活性化など実績も多数。オーダーメイド家具では素材の特性を生かした製品を提供しています。銘木師として教育・啓発活動も積極的に行い、木の文化の普及に努めている。木材普及と木育活動にて、令和6年度京都市環境大賞奨励賞受賞。

プロダクト部会 リーダー
株式会社torinoko 代表取締役 小山裕介(写真中央右)

「見つめて、見つける、モノづくり」をテーマに、暮らしや素材、技術、歴史を見つめ、新たな気づきを生むモノづくりを目指す。無印良品で10 年以上の商品開発経験を持ち、家具から雑貨まで幅広くデザイン・企画に携わる。2019 年に会社設立後は、日用品のプロダクトデザイン、商品企画、ブランディング・販売をサポートする。実績として、点図ポチ袋の開発で視覚障がい者支援、東北の「福缶」で震災復興支援に貢献。「木と暮らすデザイン KYOTO」では、針葉樹や端材を活用した商品開発を行い、森林資源の有効活用を推進しt。地域資源を生かしたオリジナル商品の開発・販売も行い、地域産業との連携を深めている。

木育部会 リーダー
株式会社Hibana 代表取締役 松田直子(写真中央左)

火と木のある暮らしを提案し、地域資源が地域内で循環する持続可能な社会を目指す。森林環境教育の企画・研修を中心に、森林資源の利用促進と、それに関わる人々や団体の増加を目指す。活動は、「ひおこし事業(事業者支援)」「ひいく事業(環境学習)」「たび事業(地域資源ツアー)」の3 本柱。「京都ペレット町家ヒノコ」では木質燃料の普及を推進し、「リンカンガッコウ KYOTO」等のプログラムでは、森林浴や里山体験を提供。「バイオマスツアー京都(たび)」では、五感を使って自然を感じる体験を提供する。企業や自治体へのコンサルティングも行い、環境・森林・バイオマスエネルギー分野での事業立ち上げを支援。地域資源の価値を再発見し、森林と共生する社会づくりに貢献。

事務局
一般社団法人京都北山杉の里総合センター 事務局長 松本吉弥(写真右)・住山洋(写真左)

北山杉・北山丸太の生産地である北山林業地域の振興を目的に設立。北山丸太や京都の木材をふんだんに使用した館内では、多様な種類の北山丸太の展示や関連商品の販売を行うほか、休憩コーナーや研修室、茶会も可能な会議室を備えている。林業地域ならではの研修・体験プログラムも提供しており、枝打ち作業の実演見学、丸太の皮むき・磨き体験、木工体験などが可能。森林資源の循環利用を学ぶプログラムや、地域振興プロジェクトへの参画も積極的に行う。北山杉の魅力を発信するとともに、地域活性化に貢献する拠点として活動。