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トークイベント「ぶっちゃけ京都の木ってどうですか?〜京都の木と仲良く付き合う方法〜」を実施しました(前編)

2026年3月23日

2026年1月、木に関わる川上から川下までの担い手が一堂に会するトークイベントが、FabCafe Kyotoで開催されました。

山で木を育て、伐り出す林業者。社寺建築を支える宮大工。木と祈りを結びつける仏画師。都市で価値を編集し届ける百貨店。そして地域材を活かす木工家。それぞれ立場も役割も異なる5名が登壇し、プロダクト部会リーダー小山氏が「京都の木は扱いづらいのか?」「木製品はなぜ高いのか?」「伝統と革新はどう両立できるのか?」「10年後の京都の暮らしはどうなっているのか?」といった率直な問いを5人に投げかけました。

急峻な地形や流通の課題、消防規制といった現実的な問題から、子どもたちへの木育、都市と山をつなぐ仕組みづくり、さらには未来の建築の可能性まで。議論は多岐にわたりながらも、一つのテーマへと収束していきます。それは、「京都の木とどうすれば、よりよく、長く付き合っていけるのか」という問いです。

当日の熱量ある対話を振り返りながら、京都の木の現在地と未来、そして私たちの暮らしとの新たな接点を探ります。

登壇者紹介 ― 川上から川下まで

原材料や素材の生産・供給を担う立場

古原 拓也 氏|株式会社アーボプラス

古原 拓也 氏京都市を拠点に、寺社仏閣や道路・鉄道沿いなど、人の暮らしと近い場所での特殊伐採・危険木処理を専門とする林業事業者。現場では「切る・残す」の二択ではなく、木と人との関係をどう設計するかを重視し、京都の木が抱える課題と現実に向き合い続けている。

最初に登壇したのは、株式会社アーボプラス代表の古原氏。寺社や住宅密集地、鉄道沿線など、周囲に建物やインフラがあり「そのまま倒す」ことができない木を、ロープワークによって安全に伐採する“特殊伐採”の専門家です。特殊伐採は、高所に登り、木を上部から少しずつ切り分けながら、ロープで制御し安全に降ろしていく高度な技術。単なる伐採作業ではなく、緻密な状況判断、身体能力、チームワークが求められる仕事です。都市部では老木や巨木が倒れるリスクを抱えるケースも多く、古原氏の仕事は「木を守る」だけでなく、「人の暮らしの安全を守る」役割も担っています。

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木を活かし、かたちにする立場

富沢 真由 氏|有限会社匠弘堂 ブランドマネージャー

富沢 真由 氏兵庫県出身。神戸大学経済学部卒業。2024年より、京都の宮大工集団「匠弘堂」にてブランドマネージャーを務める。広報担当として、SNS発信やイベントの企画・運営を行い、宮大工の仕事や社寺建築の魅力を広く発信している。あわせて、経理・人事労務・工事関連の事務手続きなど、職人を支えるバックオフィス業務も幅広く担当。保育士資格を保有しており、子どもと関わることが大好き。

社寺建築を手がける宮大工集団・匠弘堂のブランドマネージャー、富沢氏です。新築や修繕を通じて、日本の伝統木造建築を次世代へとつないでいます。

匠弘堂が大切にしているのは、初代棟梁の言葉——
 「見える所は当たり前。見えない所ほど気配りをせなあかん。」

完成後には隠れてしまう継ぎ手や仕口、構造の細部にこそ心を配ること。それが百年、二百年と建物を守り続ける力になるといいます。「解体しても恥ずかしくない仕事をする」という覚悟は、短期的な効率とは対極にある、時間軸の長い建築思想です。

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宅間 敦司 氏|仏画屋 宅間堂

宅間 敦司 氏仏画専門の絵師。平安から鎌倉時代に活躍した絵仏師「宅間派」の末裔であり、研究家としても活動。伝統的な仏画制作を軸としながら、現代の感性に合わせた独自の発展を目指し日々奮闘しています。伝統の継承と革新の両立を追求する傍ら、趣味は太極拳とカードゲームという一面も。

川中のもう一つのかたちとして登壇したのは、仏画師として活動する宅間氏。平安後期から続く仏画師集団「宅間派」の流れを汲み、現代においても祈りのかたちを描き続けています。

仏画制作では、板や和紙、天然顔料といった自然素材が用いられます。木地に向き合い、下地を整え、幾重にも色を重ねていく工程は、単なる絵画制作ではなく、素材との対話の積み重ねでもあります。とりわけ木に彩色を施す作業は繊細で、湿度や木目の状態によって仕上がりが左右されるため、高度な技術と集中力が求められます。

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賀來 寿史 氏|木工家

賀來 寿史 氏これまで「木工家」が当たり前にしてきた「つくって売る」という行為…そもそもそれだけが正解なのか?という問いかけをもち、木工家が持つ技術、知識、経験をもって、ジャンルの壁を超え、いろいろな人、コトと関わることで「木工家」として生きることができるのか…ということを試みながら活動しています。 近年は、地域の木材を用いて「自分でつくって、自分で使う」「みんなでつくって、みんなで使う」活動を通じて現代の「顔のみえない誰かがつくったものをただ消費する」という享受される時代からの自ら関わり創造する未来へのアップデートを木工でプロトタイピングしている。

木を「暮らしの道具」として捉える立場から登壇したのが、木工家・プロダクトデザイナーの賀來氏です。地域材を活用した椅子制作やワークショップを通じて、「自分たちの暮らしの道具を自分たちで作る」という文化の再生を提唱しています。

賀來氏の活動の中心にあるのは、完成品を買うだけの消費者ではなく、素材に触れ、手を動かし、つくる側へと回る主体性です。かつて人々は、自分たちの生活に必要な道具を自分たちで生み出してきました。その感覚を取り戻すことが、木と向き合う第一歩だといいます。

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製品を最終消費者へ販売・提供し、消費者に最も近い立場

谷 京子 氏|株式会社 大丸松坂屋百貨店 大丸京都店 ローカルコンテンツ担当

谷 京子 氏大丸京都店にて営業部を経て2018年より現担当。社の歴史を活用した新選組関連のプロジェクトをはじめ、文化イベントの開催、産学連携事業、社寺等での高付加価値体験の企画・販売など、百貨店の領域にとらわれず広く京都の地域活性に取り組む。プライベート(副業)では京都を拠点とした観光案内やイベント企画・司会なども。京都市出身。京都・観光文化検定1級。

川下、すなわち「消費者と最も近い場所」から登壇したのは、大丸京都店でローカルコンテンツを担当する谷氏です。創業1717年の老舗百貨店に身を置きながら、京都という都市の魅力と地域素材の可能性を編集し、発信する役割を担っています。

百貨店は、かつて大量消費の象徴とも言われた空間です。しかし近年は、「京都らしさ」や「地域性」に価値を見出す動きが強まっています。大丸京都店でも館内リニューアルの際に京都産の木材を取り入れるなど、地元素材を活用した空間づくりが進められてきました。
山と街の距離を縮める接点として、百貨店という都市空間が持つ可能性は、想像以上に大きいのかもしれません。

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後半へ続く