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藍に出会う

2022年2月11日

今年は雪も多く底冷え。久しぶりに京都らしいの冬を感じます。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

伏見区羽束師を拠点に、藍師・染師として活動されている西村尚門(なおと)さん。農業分野での新しいビジネスモデルの創出を目指す京都市の取組「KYOTO Agri-Business Café」に参画。木も染めたい!という熱い声が届き、工房にお伺いしました。

西村さんは、藍の本場である徳島県で藍の生産や染めの修業をされ、現在は自宅とその周辺で藍の栽培から染色まで一貫して取り組まれている唯一無二の存在です。工房の中には、ハンカチ、ブランケットなど、藍色が満ちています。本当に美しい。藍色の神秘的な深みのある光沢感に自然と心が吸い寄せられます。

藍は3月に種を植えて夏に葉を収穫した葉を乾燥・発酵させて染料の元である「すくも」を作り、灰汁などで溶かして染液にし、布地などを何度も浸けて乾燥させて染め上げます。西村さんは、化学薬品等を一切使わず、自然素材にこだわって作られています。染め場も工房の床下をご自身で掘って作られるなど、手間をかけ、藍への思いの深さを感じます。

作業台の上には、藍色の木片。これは布を染める時に、模様など白く染め残す場所を押さえるために使うものですが、「えっ!?木がこんなにきれいに染まるの?」とかなり驚きました。
藍染めは布だけでなく、木も染めることができる。衣食住の中でも「住」に関わり、世代を超えて伝えられていくものを作りたい、藍で染めた椅子の制作などに挑戦してみたいとのこと。藍も木も共に自然が育んだアースカラー。相性も抜群だと思います。木そのものを染めても、木と染めたものを合わせても‥可能性は広がります。大量生産品の服も藍で染め直すことで、世界に一つだけのかけがえのないものに生まれ変わる。工房で開催される藍染め体験を通じて、そんな魅力にはまる人も多いとか。

自然のものを生かす。モノを長く大切に使い続ける文化。SDGs時代に見直されるべきこれからのライフスタイルではないでしょうか。
かつては、東寺から上鳥羽にかけて「京の水藍」と言われる藍が盛んに生産されていた京都。100年の時を超えて京都の藍生産の新たな歴史が始まっています。コロナ禍で、何かと先行き不安な日々の中、藍の深い魅力に癒されたひと時でした。